浜松在住のマリンバ奏者、アレクサンダー・テクニーク教師の間瀬早綾香です。

9月の終わりにアレクサンダー・テクニークの合宿に参加し、そこで得た学びを少しシェアしたいと思います。

本番前に十分なリハーサル時間が取れなかったり、楽器に触れる時間が限られている場合でも、自分が納得できる演奏をしたいですよね? そんな状況で役立つアイデアをお伝えできればと思います。

合宿に参加する前、マリンバ奏者の布谷史人さんのレッスンを受けました。その際、初めて弾く楽器、初めての場所で演奏する体験をしました。最初の音を出した瞬間、自分が普段聴き慣れている音や感触ではなく、

「あなた(楽器のことです、笑)、誰?」

と戸惑っている自分に気づきました。結果として、「この曲をどう表現したいか?」という意識に到達するまでに少し時間がかかってしまいました。

合宿では、マリンバを持参し、「リハーサルができない場合、どう弾くか?」という場面を想定して、アレクサンダー・テクニーク教師でヴォーカリストの鈴木重子さんにレッスンをしていただきました。

アレクサンダー・テクニークの世界的なスーパーティーチャーであるキャシー・マデン先生は「お客さんをご招待して」とよく仰います。重子さんはそのアイデアをさらに発展させて、

「『どんな楽器かわからない』『どんな音が鳴るのか分からない』『この部屋でどんな風に響くのか分からない』というドキドキした状況も一緒にお客様をご招待してみては?そして、『今、この部屋、私はどんな状況なんだろう?』という情報を音楽に取り入れてしまうのはどうでしょう?」とアドバイスしてくださいました。

音を出した瞬間に、どんな状況か分からないのは私の責任ではありません。準備不足や練習不足ではなく、その状況自体が新しい挑戦だからです。だから、自分を責めたり、無駄に反省する必要はないと思います。

そして、第一音から完璧にコントロールして演奏しようとするのは私自身の思い込みであり、お客さんがそれを望んでいるかどうかはわかりません。お客さんだって「今日はどんな演奏を聴けるのだろう?」とワクワクドキドキしているはずです。

私は理想と現実のギャップに驚き、うまくいかないことに焦りを感じていたのかもしれません。しかし、重子さんは、今は亡きアレクサンダー・テクニーク教師であり、チェリストのヴィヴィアン・マッキーさんが言った言葉を教えてくださいました。

「観客は完璧な演奏を聴きに来るのではなく、演奏者の物語に招待されるために来ているのよ」

この言葉を理解したことで、私は完璧さを追い求めすぎず、その瞬間を共に楽しむことができるようになりました。

リハーサルが十分にできない状況でも、皆さんの演奏や経験に役立つことを願っています。